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引越にまつわるお話あれこれ

Vol. 36 - 2004年8月号
星と星座のお話

 蒸し暑い香港の夏の夜、そして夜更けでも派手なネオンが続くネイザンロード。 香港の夜空を見上げても、星を見つけることは、なかなか難しいかもしれません。しかし百万ドルの夜景に混じって星々は輝いています。そこで今回は、寝苦しい夏の夜のひと時夜空を見上げて、ほんの少しだけ街の喧騒を忘れていただくために、星や星座にまつわる話をしていきましょう。

 およそ1万5千年から1万年前に描かれたとされるフランスのラスコーの壁画には、空にいくつかの点々が書かれていて、おうし座のスバルや、オリオン座などを、描いたのもではないかという説を唱える研究者もいるそうです。実際旧石器時代の人々が、動物達を描いたように、夜空に輝く星々を描くことは、何ら不思議なことではないでしょうし、むしろ自然なことでしょう。

 それでは、今日88あると言われている「星座」は、一体いつ誰がつくったのでしょうか。「星座」は、英語ではConstellationです。Conは「共に」Stellaは「星」、tionは名詞につく語尾の言葉ですから、星座とは、共にある星たち、つまり天空に散らばった星たちを集め、ひとつのまとまりとして形作るものなのです。やはり天空の星と星を結んで、人物や動物、道具などの1つの形に想い描くことが、星座と言えましょう。

 今日星座と言えばギリシャ神話との関わりが有名で、古代ギリシャ時代の人々が物語と共に星座もつくったと考えがちですが、もう少し以前よりあったようです。最初に「星座」を創り出したのは、およそ5000年ほど前のメソポタミア地方、現在のイラクにあたる土地に住んでいたシュメール人ではないかと言われています。メソポタミア文明といえば、粘土などに尖ったヘラのようなもので刻んだ「楔(くさび)形文字」が有名ですが、現在まで星座の名前や絵が書かれた確たる証拠となるシュメールの粘土版は発見されていません。しかしながらシュメール人とその後に続くアッカド人達には伝承があります。

 『恒星全体は「天の羊の群れ」太陽は「老いた羊」惑星は「老いた羊の星」星には皆羊飼いがいる。ジブジアナという明るい星は「天の羊の群れの羊飼い」』

 研究者によれば、今日の「うしかい座」ではないかと言われています。共に高度な文明を築いた農耕民族であり、天文学に通じる才能を持った民族であることが窺いしれます。その後メソポタミアの地で、この2つの民族に続く人々、アモリ、アッシリア、バビロニアの人々も、星の名前はシュメール語で書いています。 こうしたことから星座の原型をシュメール人が考え生み出し、その後メソポタミアの人々が星座として発展をさせたと考えることが自然かもしれません。

 考古学的に星座の名前が初めて登場するのは、今から4000年ほど前、紀元前2000年頃のことで、アモリ人達によるものです。アモリ人といえば「目には目を、歯には歯を」で知られる「ハンムラビ法典」で有名な古代バビロニア王国を建国した民族です。彼らの記録には、「天の狩人」(現在のオリオン座)や「荷車」(現在のおおくま座)など9つの星座が書かれています。

 さて星座の起源は、メソポタミアであることは述べたばかりですが、古代エジプトでも天文学が発達していたことは言うまでもありません。紀元前1000年頃に建てられ、クレオパトラも新婚旅行の際に訪れたとされるデンデラ遺跡のイシス神殿の天井には、エジプト独自の星座のほか現在の獅子座や、山羊座、双子座など、全天に星座が描かれています。

 こうしてメソポタミア周辺部から始まり広まった星座は、時代を経てギリシャへと伝わります。ギリシャ最古の物語は、紀元前9世紀頃ホメロスの書いた「イリアス」や「オデュセイア」で、共にトロヤ戦争や、戦争後に活躍する英雄達の物語です。実はこの物語の中にギリシャ神話の主な物語や、オリオン座、おおくま座、うしかい座などの星座や星の名前も書かれています。この他にも様々な物語から題材をとり、ギリシャ神話にまつわる星座の物語が作られていきました。ここで1つ、夏の夜空で有名な「さそり座」と冬を代表する「オリオン座」にまつわる話を紹介しましょう。

 『オリオンは海の神ポセイドンと大地の女神ガイアの子として誕生しました。オリオンは神々の子として巨人のように背が高く、また狩の名人として有名でした。 そんなある日、仲間達と飲んで酔っ払っていると、狩の腕前を仲間達からも褒めちぎられ、この世の中には怖いものは何もない。俺様こそ世界で強い者はいない。と有頂天になっていました。その後この話が母である大地の女神ガイアの耳にはいり激怒します。オリオンの腕のたつのは自分がその力を与えているからであり、戒めのためとして、早速一匹のサソリを呼んで、我が子でありながらオリオンの殺害を命じます。そしてサソリは女神の命にしたがってオリオンに忍び寄り、猛毒を突き刺します。もちろんオリオンはその場で息を引き取ります。その後サソリはその手柄によって、ガイヤの手で星座となりました。一方オリオンも星座となりましたが、星座となってもオリオンは、サソリから逃げるために、絶対に天空では一緒にはなりません。サソリ座が夏の代表的な星座であるのに対し、オリオン座は冬の代表的な星座であるのは、このような物語があったからなのです。』

 さてこうしてギリシャ神話と結びついて世界的に広まった星座は、何も西洋ばかりではありません。古代中国でも星座は生み出されていました。但し呼び名は「星座」ではなく、「星宿」と呼ばれていました。最近日本で発掘調査が進み、話題となっているキトラ古墳や高松塚古墳の内部に描かれている星座も、古代中国の「星宿」の影響を受けていることは間違いないでしょう。

 以上、星座の話を足早にしてきました。この夏休みに香港や華南を離れ、リゾート地など訪れる方もいらっしゃるかと存じます。是非満天の星空を仰ぎ見て、古代の人々が壮大な星の物語を生み出したように、現代の私たちも星々に想いを馳せてみては如何でしょうか。

   

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